皆さんこんにちは。
だいぶ暖かくなったと思ったら、ここ数日いきなりまた寒くなったので、
部屋で毛布にくるまってぷるぷる震えている天野です。
そんな私の寒い日の過ごし方は、もっぱら映画鑑賞。
20代の頃は「質より量」、毎日仕事帰りにレンタルビデオ店に立ち寄り、
映画を5〜6本借りて、夜中まで観て翌朝出勤前に返す→帰りに再び借りる
という、悦楽に身をまかせた生活を続けていました。
何度まちがえて同じ映画を観たことか・・・
でもそのおかげで、古い映画や監督などにも結構詳しくなりました。
はまると徹底的に深いところまで入り込むタイプなので。
(ジャンルに偏った好みは無いので、雑食系です。なんでも観ます)
30代を迎えた頃から、さすがにそんな無茶はできなくなってきましたが、
今までの経験である程度、鼻が利くようになっているので、「これは良さ
そうだ」という映画をみきわめて観に行っています。
先日観てきたのは、皆さんご存じのこちら。
『ソーシャルネットワーク』

世界最大のSNS、フェイスブックを立ち上げたマーク・ザッカーバーグの
成功までの道のりと失った友情を描いた、伝記的作品・・・
・・・などという、面白くもなんともなさそうな謳い文句は全く信じずに
観に行ったのですが、やはり信じなくて正解でした。
まだ3月ですが、早くも私の今年度映画ベスト5にランク入りです。
賛否両論ある作品ですが、個人的には、まあまあ重い問題提起を、決して
誰かに肩入れすることなく、青春映画に置き換えてさらりと描いていて、
登場人物もシニカルなんだけどどこかユーモラスで、愛おしく感じました。
一見、マークが凄いイヤな奴みたいに描かれていますが、本人には悪気は
無い。でも、悪気が無くても、相手の気持ちを想像する力が無かったら、
知らないうちに傷つけていることもある。
彼女の大学を「しょせんボストン大」とか言っちゃうのも、それが事実だ
から正直に言っただけ(バカにしてるけど、何が悪いのかわからない)。
友人のエドゥアルドにメールアドレスを訊いて「ジャバウォック?ルイス
・キャロルを引用して教養をアピールか」といちいち相手の神経を逆撫で
するようなことを言っちゃうのも、ほぼ無意識(マークのイヤミに苦笑い
しながらも友達でい続けてくれていたエドゥアルドは、本当にいいやつ!)。
マークに対して訴訟を起こした親友のエドゥアルドも、エリートの双子も
基本的には「善良でいい人」。コミュニケーションの取り方が健康的で、
正義感が強く、優しさも持っている。
特に双子は、富裕層の子息であり、体格も良く、ハンサムで、スポーツ
万能な、いかにも前時代的なエリート学生として描かれています。
マークはどちらかというと「ちょっとオタクで歪んだ人」。彼の異常な
早口と思考の飛躍(極端にロジカルなため)、そして内心相手を小馬鹿に
したような態度に、多くの人が拒絶反応を示します。
しかし皮肉なのは、マークのように人格がいびつでも、やり方が卑怯でも
「スピードで勝った者」が成功者になる、という現代社会の図式です。
それを最も端的に表していたのが、双子がマークの行為を告発するために
会いに行ったハーバードの学長のセリフでした。
紳士的な正義感にのっとって抗議をしに行った双子に対して、マークに
勝るとも劣らない早口とイヤミのオンパレード。肝心な双子の訴えには
荒唐無稽な「早いもの勝ち」の理屈で一刀両断。あっけに取られる双子。
正しいかどうかはともかくとして、現代社会では結局、スピード競争に
勝てないと決して勝者にはなれないのだという事実をつきつけられます。
(双子が、インターネットの世界とは対極であるボートレースでも、結局
優勝できなかったというシーンが、それを象徴しています。)
ただ、マークの「フェイスブックは僕の命」という言葉や、パーティに
参加せずに一人で会社にこもっていたことからもわかるように、彼は自分
が生み出したシステムの発展に純粋な喜びを見出しているだけです。
しかし、いかんせん極端に偏ったコミュニケーションスキルしか持たない
ために、数々の誤解や反感を招いてしまうのです。
しかもなまじ頭がいいので、物事の合理性と論理の整合性ばかりを優先
してしまうから、そうではない人たちとの会話の溝は深まるばかり。
一見ムダに思える会話や、時間を無為に過ごすことも、人同士のつながり
を深めるためには必要なときがある。
でも、成功者となった彼には、その感性が決定的に欠落している。
『ファイト・クラブ』では「消費社会の奴隷になるな」というメッセージ
をやや過激に描いていたデビッド・フィンチャーでしたが(タイラーの
「もし2週間後に獣医の勉強を始めていなかったら殺す」は痛快でした)、
今回の『ソーシャル・ネットワーク』では、世界一のコミュニケーション
ツールを作成したのに、たった一人の好きな女の子とはうまく関係を築く
ことができないマークの姿を通して、「現代のコミュニケーション、本当
にこれでいいの?」というメッセージを、ほんの少しビターなユーモアを
まじえつつ、温かい目線で投げかけていて、非常に良作だったと思います。
というわけで、この映画のおすすめ度は、☆5点中4点です。
(5点でない理由は、根っからの体育会系の人にとっては非常にイライラ
するであろう展開だから)
次は、『英国王のスピーチ』かな?
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